健診の「LDLコレステロール値」とどう向き合うか―将来の心血管リスクを抑えるための考え方
- 2月20日
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更新日:3月18日
健康診断でLDL(悪玉)コレステロールの数値を指摘された際、どのように対応すべきか迷われる方も多いかと思います。脂質異常症は自覚症状がないため放置されがちですが、長期的な視点で血管の健康を考えることが、将来の心筋梗塞や脳梗塞の予防において重要です。
本日は、最新の動脈硬化性疾患予防ガイドラインに沿った、当院の診療方針についてお伝えします。

1. 血管への「累積曝露量」を考慮する
近年の研究では、動脈硬化の進行は、LDL-C値の高さだけでなく、高いかどうかだけでなく、「どのくらいの期間その状態が続いているか」(累積曝露量)が関係していることが報告されています。
一次予防(発症前の方):Lower for Longer
若いうちから適切な数値を維持し、 血管への負担を「長く抑える」ことが大切です。(Lower for Longer)
二次予防(既往のある方):Lower the Better
既に心血管疾患を経験された方の場合は、再発を防ぐために、よりしっかり数値を下げることが重要になります。(Lower the Better)
2. 生活習慣の改善が治療の基盤です
脂質管理の基本は、何よりもまず生活習慣の見直しです。当院では以下の3点を中心にアドバイスを行っています。
禁煙: 喫煙は血管を直接傷つけ、動脈硬化を加速させる大きな要因です。
適正体重の維持と食事療法: 飽和脂肪酸の摂取を控え、バランスの良い食生活を心がけます。
継続的な運動: 有酸素運動は血管内皮機能を整え、脂質代謝の改善に寄与します。
これらのベースを整えた上で、リスクが高いと判断される場合には、スタチンをはじめとした薬物療法を検討します。
3. 「頸動脈エコー」によるリスクの再評価
血液検査の結果が130mg/dL前後の境界域で、他にリスク因子(高血圧・糖尿病・喫煙など)がない場合、すぐに検査や治療が必要になることは多くありません。
一方で、「治療介入を検討すべきかどうか」の判断が難しいケースにおいて、当院では「頸動脈エコー(超音波検査)」を一つの判断材料として提示しています。
欧米ではCTを用いた冠動脈石灰化スコア(CAC)がリスク評価に用いられますが、日本では健診目的でのCTは保険適応外です。頸動脈エコーは、被曝もなく保険診療の範囲内で行える、有用な画像診断の一つです。
エコー検査で何を見るのか
血液検査の結果がボーダーラインの方にとって、エコー検査は「本当に治療が必要な状態か」を見極めるための重要な指標となります。検査では主に、血管の壁の厚みである「IMT(内膜中膜複合体厚)」を測定します。
1.1㎜は「血管の肥厚」の境界線
健康な方の血管の壁は、通常0.8mm程度です。最新のガイドライン(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版)では、この厚みの最大値(最大IMT)が1.1mm以上になることを「肥厚(壁が厚くなっている状態)」と定義しています。
なぜ1.1㎜を超えるとリスクなのか
頸動脈は「全身の血管の鏡」と呼ばれます。首の血管の壁が1.1mmを超えて厚くなっているということは、心臓を養う血管(冠動脈)や脳の血管でも同様に動脈硬化が進んでいる可能性が高いことを示唆しています。
実際に、多くの疫学調査において、最大IMTが1.1mmを超えると、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが有意に高まることが報告されています。つまり、1.1mmという数字は、単に壁が厚いというだけでなく、「将来、命に関わる病気を起こす準備が血管内で始まっている」というサインなのです。
「リスクの格上げ」という判断
当院では、この数値を「リスクの再評価」に活用します。 例えば、LDLコレステロール値がそれほど高くなく、計算上のリスクが「中等症」と判定された方でも、エコーで最大IMTが1.1mmを超えていたり、プラークが見つかったりした場合は、「高リスク(より厳格な管理が必要な状態)」へと格上げして考えます。
これにより、「まだ大丈夫」という過信を防ぎ、適切なタイミングで生活習慣の改善や薬物療法を提案することが可能になります。
4. まとめ:納得感のある健康管理のために
健康診断の数値は、ご自身の体と向き合う一つのきっかけです。当院では、ガイドラインに基づいた客観的な情報を提供し、患者さんお一人おひとりのライフスタイルや将来のリスクに合わせた管理計画を共に考えてまいります。
数値について不安な点や、ご自身の血管の状態を詳しく確認したい場合は、どうぞ診察時にご相談ください。




